人生に迷い彷徨っていたとき、比叡山延暦寺を訪ねました。
横川にある元三大師堂を参拝していますと、堂内に「お神籤発祥の地」と書かれているのが目に留まりました。
「私はこれから、どのように生きて行けば良いのだろう」
生き方に迷い、自分を見失いかけ、将来への不安でいっぱいだった私は、受付へと向かい「お神籤はできますか」と尋ねていました。
対応してくださった女性は、お神籤の説明をされた後、私の話に静かに耳を傾けてくださいました。そして、こう告げたのです。
私は内心、お神籤をしていただけないことを残念に思い、せっかく勇気を出して胸の内を明かしたのにと、複雑な気持ちになりました。しかし、彼女は私の目を見つめ、こう続けたのです。
その目には力があります。ご自分の力で生きて行けます」
その瞬間、目の前がパッと明るくなったような気がしました。私はその言葉にとても勇気づけられ、もう一度、自分の力で頑張ってみようと思えました。
私が目指すのは、「その時の私」に起きたことです。思いに寄り添い、話を傾聴し、勇気づけられる。彼女のような存在であることです。
出会いが人を変えることがあります。些細な一言が人生を動かし始めることがあります。
今現在、悩み苦しんでいるのなら、何から話し始めて良いかわからないかもしれません。愚痴になってしまうと思うかもしれません。誰かのせいで、社会のせいで、「私はこんなにも苦しめられている」と感じているかもしれません。
どのような言葉から始まろうと、私は否定しようとは思いません。まずは、その苦しみや痛みを少しでも軽くしていかなければ、そこから抜け出すことさえ難しいからです。
「なぜ私は苦しいのだろう」「何に悩み困っているのだろう」。その理由さえ分からなくても構いません。どのような言葉でも、口に出して話し始めることで、少しずつ何かが動き始めます。
まずは、背負ってしまった重荷のような苦しみを少しでも軽くすること。対話の中で心が少しでも軽くなれたなら、そこから何かが変わり始めると私は信じています。
HANEには、もう一つ「土に触れる時間」があります。人は何かに集中しているとき、余計なことを忘れ、夢中になることができます。
では、なぜ陶芸なのでしょうか。一つは、土という自然に触れること。もう一つは、自分の思うようにならない土との対話にあります。
思考を手放し、自分の感覚だけを頼りに土と向き合う時間は、大きなリラックス効果が期待できます。以前、陶芸体験を行っていた頃、ほとんどのお客様が自然と笑顔になって帰られたことからも、それを実感しています。
私が延暦寺で感じたように、HANEという場所で過ごす非日常の時間の中で、まずは今のつらい状態から抜け出すきっかけをつかんでいただけたらと思っています。
何かしらの気づきが生まれたなら、その気づきは暗闇に射し込む一筋の光となるでしょう。その光があなたを照らし、再び前を向き、一歩を踏み出そうという勇気へとつながっていきます。
私の想いは、あなたがご自身を信じて生きていかれることです。一度の出会いで何かが始まったなら、それほど嬉しいことはありません。
「何度も通わなければならない」というようなものではありません。人生は、あなた自身のものです。ご自身の中で気づきが起こり、一度の出会いが迷いや悩みから抜け出すきっかけになったなら、それが一番だと思っています。
あの日の私がそうであったように、今は暗闇の中にいるように思えていたとしても、必ず光は見つかります。その光を見つけるお手伝いができれば、それ以上の喜びはありません。