キトラ古墳に描かれた「宇宙」

現存する最古の天文図が描かれているキトラ古墳。
日本の都が、奈良県明日香村にあったころのお墓です。
被葬者は特定されていませんが、当時の権力者に間違いありません。

棺が収められている玄室は方形をしていて、
東西南北の壁には青龍、白虎、朱雀、玄武と呼ばれる四神像が、
十二支像とともに描かれています。

玄室の天井には、
北極星を中心とした350以上の星たちと、
太陽、月などの天文図が描かれています。

四神像や十二支像が描かれたのは死者を守るためでしょうか。
亡き人を神様の世界へ連れて行ってもらうためでしょうか。
多くの星と太陽と月。これらが表すものとは何なのだろう。

死は終わりではない

亡くなった人を、その星、太陽、月の中心に置き、
宇宙の中心になれるようにと願ったのかもしれません。
宇宙の一部になれるようにと願ったのかもしれません。

その世界は実在する目に見える世界を超えた、
当時の人々の世界観だったのだと思います。

亡き人を大切に埋葬し、周囲に壁画を施した理由は、
人は死によって、すべてが終わるのではなく、
死後の世界があると信じていたのではないかと思います。

死。それは終わりではなく、
死後、神々や宇宙の中に包まれていくような感覚を、
人々は持っていたのかもしれません。

八百万の神と、私たちの祈り

太古の日本は、自然とともに暮らしていました。
採集や農耕により生活を営んでいました。
当然、自然に対しての畏敬は強かったでしょう。

自然の力を認め、自然の恵みが得られるよう祈願する。
自然に神様や、霊力のようなものを感じる。
自然崇拝(アニミズム)していました。

自然崇拝は現在も各地に残っています。
私たちが神様と呼ぶもの、感じるものは、様々です。
神話に登場する神々を崇め、様々な神様を祀っています。

山が御神体、岩が御神体のように自然を神様と崇めますし、
天照大神、伊邪那岐命、伊邪那美命などの神々も祀っています。
まさに八百万(やおよろず)の神です。

人々は偉大な力や不思議な力を神様の働きとしてきました。
エネルギーを感じる場所には、神様が降り立ったと感じ、
不思議な裂け目や大きな岩なども神聖な物と崇めてきました。

実際に神様の姿を見たという人がいたのかもしれません。
人々の根源には目には見えない力を感じる能力、
宇宙観と言っても良い感覚が、もともと備わっていると思うのです。

太古の昔、現在のように電気も情報もない時代。
自然と共に生きたからこそ体験できたことは多かったでしょう。
太陽、土、水、自然の恵みは、現代より有り難く感じたでしょう。

その恵みを与えてくれる自然にも、
その自然を生み出してくれる大きな存在にも、
人々は感謝と敬意を抱いていました。

そこに神の存在を感じて敬うことは、
人間の自然に身についている感覚ではないか。
敬うと言うより、心からの祈りだったと思います。

現代も受け継がれている神社、仏閣や、祈りの場。祭りや神事。
人は今も、事あるごとに祈ります。
自然に感謝し、敬い大切にしています。

目に見えないものを敬い、大切にする。
自然や宇宙とのつながりを感じ、大切にする。
そうした感覚は、私たちにも受け継がれています。