「自分らしくあらねばならない」という思い込み

「自分らしく生きていきたい」
「次の試合では、自分らしいプレーをしたい」
テレビやSNSでも、
この「自分らしく」という言葉をよく耳にします。

その言葉を聞くたびに、
私はふと疑問に感じてしまう時があります。

「それって本当に『自分らしい』のかな。
それとも、一生懸命に『自分らしさ』という型を
作り上げようとしているのかな」と。

それはきっと、私自身が「自分らしさとは何か」
を必死に探し求め、
迷い続けてしまった過去があるからだと思います。

「自分らしくあらねばならない」という不自由

私自身、子どもたちが取り組んでいたこともあり、
スポーツがとても身近にありました。

試合前には、
「練習通り、自分らしくプレーしよう」と声を掛けました。

けれど今振り返ると、それは、
「理想として積み上げてきた自分を発揮するべきだ」
という意味で伝えていたのかもしれないと思うのです。

スポーツの試合などで「自分たちのプレーをしたい」
という言葉を聞くとき

それはどこか「自分たちが、これまでの練習で作り上げた
『理想の型』を発揮したい」
と言っているように聞こえることがあります。

もし、その「自分らしさ」が、
・こうあらねばならないというルール
・伝統や先輩たちから引き継いだ戦い方
・自分が「こうありたい」と願う理想の姿

なのだとしたら、それは「自分らしさ」ではなく、
「理想を追い求めている状態」なのではないかと思うのです。

私たちは本来、自分らしく生きることを望んでいます。

しかし、他者からの評価や社会の役割を優先するうちに、
いつしか「自分らしく生きる」という言葉そのものが、
自分を縛りつける新たな呪縛になってしまうのではないでしょうか。

 特別になれなければ、自分らしくないという焦り

今は、「個性」が大切にされる時代なのだと思います。

自由であっていい。
人と違っていていい。
かつての私も、「個性的な人間」に強く憧れていました。

自分の個性とは何かを探し、
他の人がやらないこと、自分だけの特別なスタイル、
人と違う何かを必死に追い求めた時期があります。

「何も持っていない自分」を認めるのが怖くて、
何か一つでも優れた自分になりたかったのです。

しかし、探せば探すほど、
「特別でなければ自分らしくない」
と思うようになっていったのです。

個性的になれない自分。
特別になれない自分。

そんな自分を認められず、私は次第に
「自分がわからない」と苦しむようになっていきました。

自由になろうとして、自ら不自由になっていく――。
そんな矛盾の中に私はいました。

個性とは、新しく作るものではなく「持って生まれたもの」

今の私は、すべての人が「個性」を持って
生まれてくると信じています。

生まれてくる子供たちがみんな違う顔をしているように、
生まれながらに備わっているその子だけの感性、
考え方、心の動きは、十人十色です。

どんなに同じ教育を施しても、
全員が同じ人間になることはありません。

それと同じように、「自分らしさ」も、
本来は持って生まれてくるものなのではないでしょうか。

自分らしさとは、
「どういう人間になるか」
ではなく、「もともと持っているもの」

けれど、自分が何を持って生まれてきたのか、
明確な説明書きはありません。

そのため、社会の枠組みや教育の中で
周囲に合わせているうちに、
私たちはいつしか、
その本来の自分らしさを忘れて成長してしまいます。

そしてある時、大人になってから
「本来の自分らしさって何だっただろう?」
と思い出そうとして立ち止まるのではないでしょうか。

しかし、一度忘れてしまったものを思い出すのは
容易ではありません。
だからこそ「自分がわからない」と悩み、
苦しくなってしまうのです。

ここで多くの人が、その苦しさの中で、
新たに“自分らしさ”を作ろうとしてしまう。

もし、作られた自分らしさが、
持って生まれた本来の自分とズレていたとき、
心の中に違和感が生じ、

「いくら頑張っても自分がわからない」ともがき続けることになります。

本来の自分へ還る

私たちは、生まれた頃に戻ることはできません。

けれど、これまでに背負い込んできた他人の目や
「あるべき理想」を削ぎ落とし、本来の自分らしさを
取り戻すことはできるのではないかと思います。

だからこそ、私は
「足すのではなく、引く」
「本来の自分へ還る」
というコンセプトを大切にしています。

本来の自分を生きることは、
決してワガママや自分勝手な生き方ではありません。

私は、人は誰もが「ジグソーパズルのピース」
のような存在だと思っています。

この世界という大きなパズルは、
どのピースが欠けても完成しません。

私たちは一人一人違うピースですが、
つながり合い一つの世界を築いていける。

一人一人がバラバラに生まれてくるけれど、
どこかつながっている。
だから人と人は助け合い、励まし合えるのだと思います。

むしろ一人一人が個性を発揮することで、
世界は成長していくのではないだろうかと思います。

自分とは何か。私は何をもって生まれてきたのか。

その答えを探すことは、
「新しい自分を作ること」ではなく、
「本来の自分へ還っていくこと」なのではないでしょうか。

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